狼系王子とナイショの社内恋愛
勢いよく話し出しはしたけれど、音量はじょじょに小さくなっていって、最後の方はぼそぼそ言ってるだけになってしまった。
もう本当に穴があったら入りたい。
こんな密閉空間じゃ結城さんの視線から逃れる場所がなくて、いたたまれない気持ちになる。
じっと見つめられながら、キスされたせいで意識しちゃってるとかそんなカミングアウトさせられて、もう恥ずかしくてどうにかなりそうだ。
「なんかひどい誤解されてるけど、俺も、誰でもいいわけじゃないですよ」
苦笑しながらそう言う結城さんに、チラっと視線をやる。
結城さんは、開いた足を立てて座っていて、それぞれのひざに腕を乗せていた。
目を伏せているけど、口元は微笑んでいた。
「でも……あんなに色んな人と噂になってるじゃないですか。
あ、美人だったら誰でもいいって事ですか?」
「いや、そういうわけでもないです。
あー、でも、今は誰でもいいわけじゃないって言い方の方が正しいかもしれないです。
前は確かに後腐れなさそうで寄ってきてくれる女なら割と誰でもって感じでしたから」
苦笑いした結城さんが、こっちを見て優しく目を細めるから、不意打ちのせいでドキっと胸が高鳴った。