狼系王子とナイショの社内恋愛
「でも今は違います。理由が知りたいですか?」
「……知りたくありません」
意味深に見つめてくる結城さんの視線から逃れようと目を逸らす。
結城さんに、なんでか問われて、これ以上意識しちゃったらまずいからと答えたら、笑われた。
だって、どんどん意識していったら、私はきっと結城さんの事を――。
そんな私の気持ちを分かってか、結城さんはふっと微笑んでから私の顔に触れて、自分と向き合わせた。
間近に迫った結城さんに、心臓がこれ以上速いテンポは刻めないと悲鳴を上げそうだった。
……誰か、助けて。
「意識して、俺の事好きになってください」
返事ができずに黙ったままでいる私を、結城さんが抱き寄せる。
そして間もなく唇が塞がれた。
こんな上等な男に言い寄られて、甘い言葉をささやかれて、溶け出しそうなほどに甘くて濃厚なキスをされて。
堕ちない女がいるのか教えて欲しい。