狼系王子とナイショの社内恋愛

大体、結城さんから誘いのメールが入って、それに私が従う感じだ。
従うって言い方はどうかと思うけれど、考えてみればこの変な関係は、結城さんに脅されて始まったものだから間違ってはいない。

佐々山課長との関係をバラされたくなかったらって話だったのだから。

でも、正直に白状しちゃえば、もうそんな脅しなんて私の中では関係なくなってるんだけど。
佐々山課長との思い出がつまった部屋に帰りたくないっていう気持ちだって、もう薄れつつあるし大丈夫だ。

それでも、夕食を誘ってくれる結城さんを断ろうとしないのは、ただ単に結城さんと過ごす時間が嫌じゃないから。

そんな事、絶対に口には出さないけれど。

「そうなんですか」
「一週間くらいですけどね」
「え、一週間……？」

あまりの短さに驚くと、結城さんが苦笑いを浮かべる。

「付き合う前までは、風評通りさっぱりしてて付き合いやすかったんですけどね。
付き合い始めた途端、電話した時誰と一緒だったんだとか色々言うようになって」
「……それで別れたんですか」
「本気じゃなかったんですよ。高橋さんには軽蔑されるだろうけど、完全に遊びというか、アクセサリー感覚だったんです」