狼系王子とナイショの社内恋愛


「私はあまり気持ちを誤魔化したりするの得意じゃないから、すぐ言葉にしちゃうんです」
「でも、佐々山課長と話していた時は、言いたい事全部我慢してましたよね?」
「あれは……だって、素直な気持ちなんて言ったら課長が困るのが分かってたから。
すぐ言葉にするとは言いましたけど、周りの状況に応じてですよ。
一応人並みには空気読めてるつもりなので」

あの時は、すがりつきたい気持ちを我慢した。
それは、そうしたところで誰も幸せになれないって分かっていたからだ。
課長だって、私が引き下がったりしたら困るのは目に見えていたし、あれが最善だった。

暴走しそうになる気持ちを抑えて、必死に気持ちを飲み込むしかなかった。
損だとか得だとか、そんな計算なんかなしに、本当は抱きついて本音をぶつけたかったけれど。
離れていってなんて欲しくなかったけれど。

「本当は、別れてからずっと課長に本音をぶつけたかったんです。
だってあまりに急だったから、私まだ何も言えてなくて……。
結婚のお祝いも言えていないし、恨み言も言えてないんです」

だから、私の心の時間は止まったままなのかもしれない。
課長との事が、消化不良を起こしているせいで。








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