狼系王子とナイショの社内恋愛


きっと、結婚おめでとうございますって言葉や、軽いイヤミでも笑って言えるようになった時、私は歩き出せるのかもしれない。

そう言った私に、結城さんは今はリハビリ中ってところですかと微笑む。

「そんなところです」
「誰かが横で支えたら、もっと早く歩けるようになるんじゃないですか?」
「……例えば結城さんがって事ですか」

ふっと笑うと、結城さんは優しく微笑んで私の言葉を肯定する。

「結城さんに私を支えるだけの体力があるなら、考えておきます」
「着やせするみたいで細く見られる事が多いんですけど、これでも毎日筋トレしてるし力はあると思いますよ。
高橋さんがリハビリなまけて二倍の大きさにならない限りはどうにかします」
「……許容範囲広すぎませんか」

呆れて笑うと結城さんは、高橋さんに限ってですけどねと、サラリと言いのける。
今まではスルーしてきたそれが、なんとなく今までみたいに聞き流せなくて顔に血が上って行くのを感じた。

「それより、敬語の理由、教えてくれるんじゃなかったんですか」

結城さんの冗談みたいな発言を真に受けた事を誤魔化したくて、慌てて話題を変える。
結城さんはああ、と今思い出したような顔をしてから困り顔で笑った。




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