狼系王子とナイショの社内恋愛


そんな事を考えながらカフェを出て、少し歩いたところで、自分自身への言い訳に気づいて立ち止まる。

いかにも優輝の事を思って退席したみたいに言ってるけど本当はそうじゃない。
あの空間に耐えられなかったのは私の方だ。

優輝の声と悲しそうな顔は、先週の事を思い出させるから、見ていられなかったんだ。

館内は映画が終わったところなのか、人で溢れかえっていた。
中途半端なところで立ち止まっているせいで、数人にぶつかられてその中のひとりには舌打ちされた。

上手くいかない時は結局どこにいたって同じだなと痛感しながら出口に向かう。

映画なんて見たところで気が紛れたりしないし、外に出たからって嫌な事を忘れさせてくれるほどの出来事なんて降ってこない。
それどころか、こんな映画館なんかで優輝と会っちゃうし、最悪だ。

ふたりで観にきた事もあるだけに、思い出が私の意思とは関係なしにポンポン浮かんでくるから、それを振り切るように足早に歩く。

もう早く帰ろう。
早く……この恋から、抜け出さなくちゃ。





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