狼系王子とナイショの社内恋愛


「最初は静かに泣いて、その後は、なんでってすがるように声を出して泣いてて……。
正直、結構色んな女と遊んできたけど、あんな風に泣く人は初めてだったんです。
心の叫びっていうか……見ているこっちの方まで心臓が痛くなるような、そんな感じでした」
「それがトラウマで敬語しか使わなくなったって事ですか?」

そう聞くと、結城さんが顔を上げる。
その顔にはつらさみたいなものが滲んでいた。

「そんなの関係ないって分かってるんです。本当に問題なのは俺の性格だとかそういうものであって、言葉づかいなんて気休めというか……なんにもならないって分かってるんですけどね。
それでも、なんとなく」
「あ、だから結城さんと噂になる人ってみんな派手な人ばっかりなんですか?」
「まぁ、結果的にってだけですけどね」
「どういう意味ですか?」
「俺以外にも自分の世界がある女なら、俺に依存する事もないだろうし楽しいだけの恋愛ができるから。
その一件があってからは、特によく見極めるようになりました」
「なんか……適当に遊ぶのも大変なんですね」

本当に言葉の通り適当につまみ食いしてるのかと思っていたけれど、そうでもないらしい。
素直な感想を言った私を、結城さんが笑う。

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