狼系王子とナイショの社内恋愛
「え、何が?」
「先輩黙っちゃったから、そんなにショックだったのかなって思って……。
どうせ嘘だろうと思って呑気に騒いじゃいましたけど、嫌ですもんね、社内に噂が広がっちゃうなんて」
「あ……うん。でも、金子さんのせいじゃないし気にしないで。
ただ、課長に迷惑がかかると嫌だなって思ってただけだから」
そう言って笑うと、金子さんは驚いたような顔をした。
「先輩、課長の心配してたんですか?」
「え……あ、うん。だって結婚するっていうのに変な噂が流れちゃったらまずいし。
だから、もし話している人がいたらデマだって否定してくれる?
なんか私が言っても逆効果っぽいし」
「分かりました! 私も課長にはお世話になってますし、何より先輩には社内で一番面倒見てもらってますから恩返ししますよー」
意気込む金子さんに、お願いねと笑顔を作った。
直後、フロア内がざわざわし出して、顔を上げると課長が出社してきたところで。
何も知らない様子の課長は、集まってくる視線に気づいて不思議そうにしながら総務課まで歩いてくる。
どうしよう。例え噂が耳に入っても、課長だってデマだって言うだろうけど……。