狼系王子とナイショの社内恋愛


口裏を合わせておいた方がいいのかな。
だけど、そんな事で個人的に連絡を取るのは……。

だって、メールだって電話だって、別れてから何度もしたいと思ったのを必死に我慢していたのに。
寂しいだとか会いたいだとか、別れたくないだとか。
何度も何度も課長の番号を開いて……でもかけちゃダメだって自分を止めて。

何十回って涙を流して、やっとここまで立ち直れてきたのに……。
今メールや電話をしてしまったら、また振り出しに戻ってしまう気がしてためらってしまう。

どうすればいいんだろうと不安に思いながら企画課のあたりを歩く課長を眺めていると、急に結城さんが視界に入ってきた。

結城さんは私にチラっと視線を移して、それから課長に話しかけた。

「おはようございます。噂、すごいですね」

開口一番そんな事を言った結城さんに、何も分かっていない様子の課長が「噂?」と顔をしかめる。

「佐々山課長と高橋さんが付き合ってるとかいう噂、まだ聞いてませんか?」

課長の顔が驚きに変わって、真面目な表情になる。




< 135 / 251 >

この作品をシェア

pagetop