狼系王子とナイショの社内恋愛


「聞いていないが……そんな噂が流れているのか?」
「すごいですよ。誰かが意図的に流してるんじゃないかってくらい広まってます。
困りますよね。デマなんでしょう?」

強く言い切るように聞いた結城さんに、課長は押され気味にああとだけ頷く。

「俺も結構ある事ない事言い広められるから、気持ち分かります。
優しくて部下にも信頼が厚い佐々山課長が二股なんてするハズがないのに、噂流したヤツもバカですね」

結城さんの言葉に、課長は頷くことも否定する事もできずに黙ったままだった。

それは、結城さんの言い方や表情のせいかもしれない。
文章にしたら課長を庇っているように思えるけど、実際は少し挑発的に感じたから。

もっとも、私が課長が二股していたっていう事実を知っているからそう感じただけかもしれないけれど。

心配になって隣に立つ金子さんを見ると、金子さんは本当ですよねーと結城さんの言葉を言葉通り受け取っていたから。

周りにいる社員も見てみたけれど、金子さんと同じような反応がそこら中で見られて胸をなで下ろす。
誰が流したんだか知らないけど本当にバカだなって呆れ笑いが聞こえてくる。



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