狼系王子とナイショの社内恋愛


「とにかく、気にする必要ないですよ。何もやましい事がないんだから」

そう言った結城さんが、そのまま課長の横を通り過ぎる。
いつもの結城さんらしくないように思えて、その後ろ姿を目で追った。

今のは、ただ単に噂がデマだって事をみんなに広めるための行動だろうか。
それとも……そう見せかけて課長を責めてたの?

結城さんが私と課長の関係を知っている事を、課長は知らない。
それでも、あんな風に言われたら結城さんが言った通り気にしないなんて事はできないハズだ。
実際は、やましい事はあったのだから。

結城さんがフロアから出て行った後もしばらく出口を見つめていたけれど。
不意に視線に気づき振り返ると、いつの間にか自分のデスクまで来ていた課長が私を見ていて。

社内だから感情を表に出さないようにしているけれど、課長が動揺しているのは十分分かった。
そんな課長から目を逸らしてからハっとする。

私、今……。
課長よりも結城さんを目で追ってた。

その事に気づいて、驚きを隠せなかった。



< 137 / 251 >

この作品をシェア

pagetop