狼系王子とナイショの社内恋愛
「―――高橋さん」
出口を一歩出たところで、そう呼ばれると同時に腕を掴まれた。
振り向くと結城さんが笑顔を作る。
少し息がきれているところを見ると、走ってきたのかもしれない。
「何か? ……佐々山課長は?」
一緒にいたハズの優輝がどうしたのか気になって聞くと、結城さんが「さっき帰りましたよ」と教えてくれる。
「高橋さんの様子がおかしかったから気にしてたみたいですけど」
「……すみません。ちょっと人ごみって苦手で」
「ああ、分かります。俺もそうだし」
「そうなんですか」
「今、意外だって思ったでしょ」
「え、いえ。意外だとか感じるほど結城さんの事知りませんから」
「でも噂で聞くって言ってませんでした?」
「確かに噂はよく聞きますけど、それが事実なのかも分からないですし。
……あの、ちょっとよけません? 邪魔になっちゃってるので」