狼系王子とナイショの社内恋愛
視線が痛すぎる。
背中を矢で刺されながら乗り込んだエレベーターには、企画課の大島さんが乗っていた。
確か結城さんよりもいくつか先輩だ。
会釈をすると、思いのほか笑顔を返されて少し不思議に思っていると「一日ですごい有名人になってるなー」と言われて、笑顔の意味を知る。
「本当に勘弁して欲しいです……。
4階のフロアの人は朝だけで大丈夫でしたけど、他の課は誰も否定しないから広まるばっかりで」
「そうだよなぁ。わざわざ否定して歩いても余計怪しいしなぁ。
ああ、でも総務の金子さんだっけ?
昼休みにバカでかい声でデマだって話してたけど」
「……そんな大きい声でした?
なんか、変に広まらないように誰かが面白がって噂してたら誤解だって言って欲しいとは言ったんですけど」
「まぁ、食堂には響き渡る程度のでかさだった」
金子さんなら十分ありえるだけに苦笑いを浮かべる。
後でもう少し声のトーンを抑えてくれると助かるって言っておこう。