狼系王子とナイショの社内恋愛
「でも、たった一日で広まるもんだなぁ。一日っていうかまだ半日だし」
「誰かが面白がって広めてるんですかね。
付き合ってるとかの恋愛ネタって面白がる人多そうだし」
「そうだよなぁ。企画課も朝、結城と課長が話してるの聞くまでは散々盛り上がってたし。
みんなどうせデマなんだろうとは思った上で、つい楽しんじゃうんだよなぁ。
ああ、でも山川は全然乗ってこなかったけど」
「山川さんって、あの美人の人ですよね……」
結城さんと一週間だけ付き合って別れたっていう。
「そうそう。なんか美人だけど近づきがたいっていうか、なんかとっつきにくくてあまり話さないけど。
今日も朝からずっと険しい顔してるし。
女の子はやっぱり愛嬌があった方がいいよ。いくら美人でもあんまりツンツンしてると興味もなくなるし」
「そうですか……。あの、つくの遅くありません?」
さっきから随分会話をしているのに一向に四階に着く気配がない。
っていうか動いてないんじゃ?ってくらい静かすぎる。
だけど、照明は消えてないし、電源が落ちたとかじゃないとは思うけど……。
大島さんも、そういえばそうだなと不思議そうに、天井を眺める。
それから、開閉のボタンを数回押して……「止まってるっぽいな」と眉をしかめた。