狼系王子とナイショの社内恋愛
定時前に会社を抜け出してくるのは社会人としてどうなのかとも思ったけれど。
残業がなかなかつけられないのは知っているだけに、まぁそれもそうかと納得してしまう。
実際、つけていない残業は週に7,8時間はあるだろうし、そう考えると今日の定時10分前退社はそこまで問題だとは思えなかった。
「軽蔑しますか?」
急にそんな事を聞かれて、どうしてですかと聞き返すと、結城さんはバツが悪そうに笑う。
「社会人としてあるまじき行動だから」
「それはそうですけど……でも、そういう気分の時もあるだろうし、仕方ないんじゃないですか。
普段結城さんが仕事をないがしろにしているわけじゃないのは知ってるし、たった一度、しかも10分のサボりを見かけたからって軽蔑なんてしません」
それを聞いた結城さんが、ホっとしたように柔らかく微笑む。
それから、私の持っていた鞄に手をかけた。
「持ちますよ。体調悪いんでしょ。
ついでに送りますから、高橋さんは道案内だけお願いします」