狼系王子とナイショの社内恋愛
大丈夫です、と言おうとして、結城さんの定時前退社の理由に気づいてハっとした。
そうだとは言い切れないけど、多分……。
私が体調悪いっていうのを、大島さんに聞いたから気にして追いかけてきてくれたんだ。
他の人に嘘をついてまで。
そんな優しさが嬉しくて、顔がにやけそうになるのを必死で堪えた。
だけど、結局我慢できずに笑ってしまうと、結城さんに不思議そうな顔をされてしまう。
「どうかしましたか?」
「いえ。結城さん優しいなぁと思って」
結城さんは私の答えに納得がいかないらしく、尚も不思議そうに、それのどこがおかしかったんですかと聞く。
「嬉しかったんです。気にかけてもらえたり、心配してもらえるのが」
そう言って結城さんに微笑んでからゆっくりと歩き出すと、結城さんも隣に並ぶ。
「正直に白状すると、私、課長が他の人を選んだって知った時、自分自身がまるで必要のない人間みたいに思えたんです。
二年も付き合ってたのに、簡単に振られちゃって……。
その課長は目の前で幸せそうに笑ってて、課長は私がいなくても幸せなんだなって思ったらなんか、私ってなんだったんだろうって、マイナスな事ばかり考えてました」