狼系王子とナイショの社内恋愛
「不意打ちはやめてください」
「別に狙ったわけじゃないですけど」
「いつもはそんな事絶対に言わないのに急に言われたら、どういう顔したらいいのか分からなくて困るんですよ」
「……もしかして照れてますか?」
結城さんは、まさかと言いながらも目を合わせてくれなくて。
からかっただけだったけれど、もしかしたら本当に照れてるんじゃと、正面に回り込んで顔を見てやろうかと思っていた時。
結城さんが、それよりと話題を変えた。
「体調が悪いならあまりはしゃがない方がいいですよ」
明らかな話題変更に、少し笑いながら答える。
「大丈夫ですよ。ただ、エレベーターに閉じ込められちゃって、それで貧血起こしちゃっただけですから」
説明すると、結城さんがこちらを向く。
その顔にはもう照れている様子はなく、真面目な顔だった。
「大島さんに聞きましたけど、数分だったんですよね?」
「はい。3、4分くらいです」
「俺と閉じ込められた時には30分以上でしたよね」
頷いた私に、結城さんは少し不安そうに顔をしかめた。