狼系王子とナイショの社内恋愛
「もしかして、我慢してたんですか?」
「いえ。……あの時は大丈夫だったんです。なぜか」
「本当にですか?」
心配そうに聞く結城さんに、微笑んで、はいと頷く。
なぜか、なんてずるく誤魔化してしまったけれど。
あの時、エレベーターの密室が怖くなかった理由を、自分では気づいていた。
結城さんが一緒だったからだって。
私は結城さんにかなり気を許しているみたいで、そんな結城さんと一緒だったから、あの時耐えられたし何ともなかった。
自分でも気づかなかったけれど、今日数分間閉じ込められただけであんなにボロボロになったのが何よりの証拠で。
なんでだとかいつの間にだとか、たまたまなんじゃないかとか。
そんな疑問が色々と湧いてきてしまうけれど、結城さんとの30分が平気で大島さんとの数分間がダメだったっていう事は揺るがないし、つまりはそういう事なんだと自覚した。