狼系王子とナイショの社内恋愛
明確にそれがなんでかって聞かれればまだ言葉にはできないけれど、結城さんが私の中で特別なのは確かだ。
男友達っていうカテゴリーを持っていない私にとって、特別な男といえばもう恋愛的な意味合いでしかなくて。
だけど、佐々山課長と別れてまだ一ヶ月しか経っていない。
それなのにもう次の恋だなんてと、まだ自分でも戸惑っていてすんなりとは認められないし受け入れられないけれど。
私の中で結城さんが誰よりも恋愛って場所に近いって事だけは、事実だ。
「あの、貧血ももう治まってますし大丈夫ですよ。
本当なら普通に仕事できたんですけど、課長がちょっと変に気を回して帰った方がいいって言い出しただけなので」
本当に送ってくれる気なのか、私の鞄を持ったまま隣を歩く結城さんに言う。
結構歩いたし、もうすぐアパートが見えてきちゃうしどうしようと焦る。
送ってもらったところで問題はないけれど、意識し出した結城さんを部屋に上げるのは抵抗があるし。
だからと言って、ここまでしてくれた結城さんをそのまま帰すのも申し訳ないし……。
ここら辺で帰ってもらうのが一番いいと思って、そう切り出そうとしたけれど。
見上げた途端に真剣な瞳と視線がぶつかって、驚く。