狼系王子とナイショの社内恋愛
出口を一歩出たところで、私の腕を掴んだまま話す結城さんにそう提案する。
こんなところで立ち話していたら、今度は何度舌打ちされるか分からないし、かなり邪魔だ。
できればもう帰りたかったけれど、社内の人だけに、あからさまにそういう態度に出るのもどうかと思ってよけましょうって事だけ言うと、結城さんは後ろの人だかりを見てから笑う。
「高橋さん、この後の予定は?
おごりますから、どこか寄って夕飯食べていきませんか」
「あ、私はもう帰りま……」
「佐々山課長との事も色々聞きたいですし」
「え……」
驚いて見上げる先で、結城さんが口の端を上げて笑みを作る。
何かを含んだ、意地悪そうな笑みを。
「俺ね、洞察力鋭いんですよ。
昔から言い寄ってくる女が多かったんで、本心見抜こうとしてるうちにどんどん他人のちょっとした表情だとか視線に気づくようになっていって。
だから、意識して見てればある程度の関係は見抜けるんです」
顔をしかめると、結城さんはふっと笑う。