狼系王子とナイショの社内恋愛


「気を回したって、例の噂の件ですか」
「あ、そうです。課長、噂のせいで私が体調崩したと思ってるみたいで。
そこまでか弱くないんですけどね」

笑いながら言ってから、朝の事を思い出す。

「そういえば、朝、結城さんみんなの前で噂がデマみたいに言ってくれてありがとうございました。
おかげで4階では一日で収束してくれて助かりました」

あの時の結城さんは少しおかしく感じたけれど、そこには触れずにお礼だけ言う。
私がなんとなくおかしく思っちゃっただけかもしれないし。

結城さんは、ああと思い出したように言った後、自嘲するような笑みを浮かべた。

「すみません。暴走しちゃって」
「暴走?」
「高橋さんと佐々山課長の事は知ってたのに、噂を改めて聞くと佐々山課長のあまりの勝手さにイライラして、つい……」

そうバツが悪そうに笑う結城さんに、やっぱりあの時の結城さんはおかしかったのかと納得する。
それから……私のために怒ってくれた結城さんに、胸が温かくなっていくのを感じた。


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