狼系王子とナイショの社内恋愛
「高橋さんがどれだけ課長を想ってツラい思いしたのかも知らないで他の女と仲良くやってるとか、考えたらカっとなって止まらなくなって。
挑発しちゃいました。すみません」
「あ、いえ。周りの社員は挑発してた事になんて気づいてませんから大丈夫です。
課長も、結城さんが私たちが付き合ってた事を知ってるとは知らないので、言葉通り素直に受け取ったと思いますし」
そう言った私を見て、結城さんは顔をしかめて笑う。
その顔は、なんだか苦しそうに見えた。
「私たち、ですか……」
私がそう言った事にどんな問題があったのかは分からないけれど。
結城さんはそれだけ言って黙ってしまうから、どうしていいのか分からなくなる。
だけど、私のアパートはもうすぐ目の前まできていて……ここで話を切るのはどうかとも思ったけれど、結城さんを呼び止めた。
「あの、アパートここなので」
そう言うと、結城さんがアパートを見上げて、新しいですねと呟くように言う。
「新築で入れたので、まだ築三年目くらいなんです。
小さめな1LDKなんで、狭いですけど……あの、お茶入れますから少し寄って行きますか?」
ここまできたら社交辞令でも誘わないのは失礼だと思って言うと、結城さんは少し黙った後、じゃあお言葉に甘えてとわずかに微笑んだ。