狼系王子とナイショの社内恋愛
「部屋、散らかっていてすみません」
結城さんが座るソファーと、写真立ての飾ってあるチェストの間に割り込むようにして言うと、ようやく結城さんの視線から写真立てが解放される。
「いえ。思っていたよりも可愛らしい部屋で少し驚きました」
「ああ、細かいモノが多いからですか?」
胸の高さほどあるチェストの上は、写真だけじゃなく小さい置物もいくつか置いてある。
オルゴールだとか可愛い温度計だとか。
実用性を重視したら必要のない細かいモノが結構多い。
「可愛いモノ、好きなんですね。
高橋さん、普段はどっちかっていうとさっぱりしてるから部屋も必要最低限の家具しか置いてないイメージでした」
「よく言われます。サバサバしてるとか、実際はそうでもないんですけどね。
あ、コーヒーしかなかったんですけど、どうぞ」
そう言って、マグカップに入ったコーヒーをテーブルに置くと、結城さんはいただきますとそれに手を伸ばす。
だけど、マグカップを持とうとした手は、途中で止まった。
どうしたんだろうと思って見ていると、しばらくマグカップを見つめた結城さんが私に視線を移す。