狼系王子とナイショの社内恋愛


この部屋に入る前から気になっていた事だけど。
結城さんの様子が少しおかしい。

いつもは柔らかい表情が、送ってもらっている途中からなくなっていた。
怖いわけじゃないけれど、こんな無表情な結城さんは初めてで戸惑う。

「高橋さんは、俺をどういうつもりでこの部屋に上げたんですか?」

真剣な顔で問われて驚いて答えられずにいると、結城さんが続ける。

「いや、社交辞令でっていうのは分かってるんです。
ただ……こんな課長の存在をそこら中に感じる部屋を目の当たりにさせて、俺を諦めさせようっていう魂胆なんじゃないかと思って」
「そんなつもりじゃないですっ。ただ、本当に送ってもらったお礼にって誘っただけで……」
「でも、俺が高橋さんと課長の並んだ写真を見てどう思うかくらい分かるでしょ」
「写真は、飾ってる事をすっかり忘れてただけで、別に未練があってずっとあのままなわけじゃありません」

本当に忘れていただけで、まったく深い意味なんてないし、今写真を抜けって言われれば抜けるレベルなんです。

結城さんの表情から明るさを奪ってしまったように感じて慌ててそう弁解すると、そんな私に結城さんはわずかに笑った。


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