狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「また会ってくれますね?」
メニューを決められないまま、ファミレスとは作りの違うメニュー表をパタンと閉じて頭を下げる。
「……なんかすみません」
高級イタリアンだなんて、冗談というか怒りに任せて勢いで言っただけなのに。
結城さんが連れてきてくれたのは、正真正銘の高級イタリアンのお店だった。
店員さんが手渡ししてくれたメニューには、料理名が並ぶだけで値段が書いていなかった。
前、聞いた事があるけど、高級レストランなんかでは、女性は値段を気にせず選んでくださいみたいな意味で女性に渡されるメニューには値段が書いていないらしい。
男性に渡されるメニューには書いてあるらしいけど。
まさかそんな都市伝説みたいな話が本当だとは思わなかった。
しかもなんか色々と場違いだ。
デニムシャツにショートパンツなんて格好も、気合いの入っていないメイクも私全部が店内の雰囲気にそぐわない。
それに比べて。
結城さんだって、黒いTシャツの上に白シャツ着て、下はジーンズっていう私と引けを取らないくらいラフな格好なのに様になっているのはなんでなんだろう。
そんな事を考えて、すぐにああ顔の作りの問題かと納得する。