狼系王子とナイショの社内恋愛
「え、だって……っ」
「結城さん、途中でやめたの」
「途中って、どのへんで?」
志穂の際どい質問に、人ごみの中で口にしても問題ない言葉を探す。
「……寸前で」
「寸前って、本当に寸前? それ、男が我慢できるもんなの?
碧衣的には準備できてたって事でしょ?」
こんな話になるなら、今日は部屋で会うべきだったかもしれない。
志穂が来たがっていたから来たけど、その志穂ももう興奮して買い物どころじゃなくなってるし。
「まぁ、そう」
「それ、お互いにおあずけ状態じゃない!」
「……まぁ、そう」
だんだんと恥ずかしくなってきて、返事の歯切れが悪くなる。
志穂はそんな私に表情全部で驚きを表した後、ええ……なんで?と信じられないという感じで呟いた。
「私だって分からないよ。
途中までは本当に普通にしてたのに、急に結城さんがやめて、それに対して特に理由も言わなかったし」