狼系王子とナイショの社内恋愛
「なんで碧衣が避けられるの?! 理由は?」
そう怒りながら聞く志穂に、だから私も分からないの、と感情的になって強い口調で言ってしまってハっとする。
すぐに謝ると、志穂はため息をついてから、真面目な顔で私を見た。
「碧衣」
「……はい」
「こんな可愛い親友に思わず怒鳴っちゃうほどストレス溜めてるのはよくないよ。
そんなに気になってるなら本人に聞けばいいじゃない」
「そんな事言ったって、怖いし」
可愛い親友だとかはスルーして答えると、またひとつため息をつかれてしまう。
「怖いって何が怖いの? 碧衣と結城さんはまだ何も始まってないじゃない。
今のどっちつかずのぬるい関係を一生続けたいならいいけど、そんな関係続けたところで何にもならないし、碧衣だって今の関係を続けたいわけじゃないんでしょ?」
「そうだけど……」
「本当に怖いのは、このまま何も始まらずに終わっちゃう事なんじゃないの?
気になるのに何もできずに終わっちゃったら、一生悔いが残ると思うよ。
怖がりながらもぶつかって結果砕け散るより、何もしない方がずっと後悔するでしょ?」