狼系王子とナイショの社内恋愛
◇「俺、高橋さんが好きです」
私の肩を抱いたまま黙って歩く結城さんが足を止めたのは、私のアパートの前だった。
もしかしたら、送っただけで帰るつもり?
てっとり速く私を帰したかったから、少し強引にも思える強さで連れてきたの……?
部屋の前まできた時そんな考えがよぎってしまって。
恐る恐る隣を見上げると、すぐに結城さんと目が合った。
結城さんの、切なそうに細められた瞳と。
「この数日間、避けてすみませんでした」
「……やっぱり意識的に避けてたんですね」
ショックを隠せずにそう呟くと、結城さんはまた少しつらそうに顔をしかめて。
弁解させてもらえますか、と聞いた。
玄関の前で立ち話で済ませる話でもないと思うから、とりあえず上がってもらう事にした。
この間の事もあるし、しかもそれから会話するのは初めてだし。
そんな状態で密室にふたりきりなんて気まずかったらどうしようとも思ったけれど、いらない心配だった。
気まずさとか不安とかそういうマイナスの感情よりも、嬉しいって気持ちが勝っていたから。
結城さんがどんな弁解をするつもりなのかは分からないけれど、避けていた事を私に弁解してくれる事が嬉しかった。