狼系王子とナイショの社内恋愛
コーヒーの入ったカップをテーブルに置くと、結城さんが、ありがとうございますと呟くように言って。
それから、隣に座った私を見た。
こうして目が合うのも久しぶりだ。
「まず最初に、高橋さんに言いたい事があるんですが」
いいですか?と聞かれて、少し迷う。
こんな風に前置きされてしまうと緊張するけれど、動揺しながらもそれを隠して頷く。
嫌な予想ばかりして勝手に混乱しそうになる思考回路を、落ち着け落ち着けと何度も言い聞かせた。
じっと私を見つめる結城さんが話し出すのを、ドキドキしながら待つ。
頷いてから結城さんが話し出すまで、結構時間がかかったと思う。
緊張している私の感じ方のせいだとか、見つめてくる結城さんの真剣な眼差しのせいだとか。
それらは一秒を十秒くらいに感じさせたかもしれないけれど、実際にも十秒は沈黙の時間があった。
見つめ合ったまま、ただそれだけの時間が。
そして。
「俺、高橋さんが好きです」
結城さんを見つめ返したまま何も言えずにいると、結城さんが続ける。