狼系王子とナイショの社内恋愛
「今まで散々適当な恋愛しかしてこなかったって話してきたし、今更こんな事言っても信じてもらえないかもしれないけど。
遊びでも軽い気持ちでもなく、高橋さんが好きです」
真っ直ぐに見つめてくる瞳に、嘘はなかった。
確かに今まで結城さん本人の口から聞いた過去の恋愛は、軽いモノばかりを選んできたって話だった。
本人が言うのだから、それは事実だったんだと思う。
だけど、少なくとも今まで結城さんと一緒に過ごしてきて私が感じ取った彼は、いい加減だとかそんな人じゃないから。
私を見つめている真剣な瞳に、微笑む。
「私は……結城さんは、優しくて少し臆病な人だと思ってます」
急にそんな事を言い出したからか、結城さんはわずかに顔をしかめて、何も言わずに私を見ていた。
「適当な恋愛しかしてこなかったのも、相手や自分が深く傷つくことを怖がっていたから軽い関係に逃げていただけで、そういう恋愛しかできない人だとは思っていません」
図星だったのか。
それまでは真剣な顔をしていた結城さんが、苦笑いをこぼす。
そんな結城さんに微笑んでから、自分の気持ちを口にした。
いつの間にか始まっていた、結城さんへの片思いを。