狼系王子とナイショの社内恋愛


「あっ、ぁ……、もぅ……っ」

止めてくれない手を両手で掴むと、結城さんに微笑まれる。
細められた瞳に愛おしそうに見つめられて、その瞳になぜだか涙が浮かびそうになった。

「さっき言ったのは、これから何年でも時間をかけて俺が本気だって分かって欲しいって意味。
今のは……俺を好きだって言う碧衣を目に前にして、簡単には止まれそうもないって意味」

最後の方は耳に直接声を注ぎ込まれる。
色気を含んだ低い声に耳から侵されていくのを感じた。

結城さんの声や体温が触れられたところから、だんだんととろけていきそうな感覚に囚われる。

「明日……も、会社が……っ」

そう途切れ途切れに言う私に、結城さんは少し息を上げながら微笑んで。
なるべく手加減すると約束した。

それがきちんと守られたかどうかは激しく疑問だけど。

結城さんの表情や触れ方、吐息。
結城さんすべてから、大切にされてる、想われている、そう実感して泣けてくるくらいには伝わってきたのは確かだ。





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