狼系王子とナイショの社内恋愛
「ふたりの事なのに、ひとりにしないでください……」
「碧衣……」
「もう……勝手に決めた答えだけをつきつけられるのは嫌です……っ」
泣きながら言った直後、結城さんの腕に抱き寄せられてそのままぎゅっと抱き締められた。
ボロボロと零れる涙が、結城さんのワイシャツに染み込んでいく。
「ごめん……」
「……避けられて寂しかったんですからね」
「うん」
「あんな途中までされて避けられて、私の身体に何か問題があったのかもとか、心配したんですからね」
一拍おいてから、そんな事気にしてたの、と聞く結城さんを、腕の中から睨む。
「だって……そうも思うじゃないですか」
そう口を尖らせると、結城さんが笑う。
それから、優しく目を細めた。
「あんなに乱れた碧衣を前に我慢するなんて、気が狂いそうだった。
俺にとって碧衣以上の誘惑なんてないよ」
行為を進めるにあたって、私に何か不手際があったんじゃ……とか不安だったのは確かだけど。
私の不安を解消するためだとしても、こんな風に言われたらそれも困る。
目を逸らしてそのまま胸に顔を埋めると、背中に回った腕に力がこもった。