狼系王子とナイショの社内恋愛


「噂は私も聞きましたが、事実ではありません」

簡潔にそれだけ言うと、室長はわずかに顔をしかめながらも頷く。
表情を見る限り、本当に一応確認しておかないとという建前からの呼び出しのようにとれて少し安心する。

本気で疑われてるわけじゃなさそうだ。

「でもこれだけ社全体に噂が行きかう事は珍しいし、火のないところに煙は立たないとも思っているんだが……。
佐々山くんも、噂はデマだと?」

室長の視線が佐々山課長を捕える。
できれば、感情が顔に出やすい課長に話を振って欲しくはなかったけれど……。

そう思いながらこっそり見ると、課長がさっきと同じように困惑しているのが見てとれた。

これじゃあ焦っているのがバレバレだ。

なんで保身のための嘘くらい上手につけないんだろう。
……私の事は半年も騙していたくせに。





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