狼系王子とナイショの社内恋愛


まぁでも、よくよく考えれば課長は自分のための嘘は昔から苦手だった。
保身という保身が本当に不得意な人で、いつも損ばかり。
もっと器用に生きられれば楽なのに、と思いながらもそういうところが可愛くも思えて……好きだった。

そこまで考えてハっとする。
保身ができないって事は……私を騙していたのは保身のためじゃなかったって事?

だって課長は自分を守るような事がうまくできる人じゃない。しかも半年の間ずっとなんて無理だ。
まして付き合って二年弱も経つ私相手に、そんな嘘をバレないように突き通せる人じゃない。

だとしたら……あの半年は、私のためだったって事なんだろうか。
ただ、私を傷つけたくなくて――?

だけど黙っていたっていずれ私にバレるし、そんな事したって時間稼ぎにしかならないのに……。
結果は変わらないのに……。

それが分かっていても、私を傷つけたくなくて必死に騙していたの……?

室長に少し聞かれただけでおどおどしている課長の横顔を見ながら、ふっと笑みがこぼれる。
この人は本当に……情けない人だ。





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