狼系王子とナイショの社内恋愛
「そういう事だったのか……。プライベートな事を聞き出してしまって申し訳なかった」
「いえ。私の方こそ室長にも課長にもご迷惑をおかけしてしまってすみませんでした」
そう頭を深々と下げてから、お願いがあるんですが……と話を切り出す。
「課長は結婚も決まっていますし、この事は内密にしていただくよう、お願いできないでしょうか。
これ以上迷惑をかけるのは申し訳なくて……」
私のお願いを、室長は快く承諾してくれた。
もっとも、私がお願いするまでもなく、コンプライアンス室の長ともなれば、べらべら口外するとも思えないけれど。
一応、念のため。
私の話を信じ切っている様子の室長に胸をなで下ろしてから、指示された通り退室する。
課長はまだ残っているけれど、私がああ言った以上、課長が何か聞かれた時返事に困ったりしても、室長はその態度を私を庇っているとしかとらないハズだ。
誰も、片思いして振られたなんて、あんな捨て身の嘘を私がついているなんて思わないだろうから。