狼系王子とナイショの社内恋愛
「また尾行ですか」
タイミングからしてそっちの可能性の方が高いと判断して呆れて笑うと、結城さんは困り顔で微笑んだ。
「恋人が他の男と呼び出されたりしたら気になって当然だと思うけど」
「……コンプライアンス室のあるこの階でそんな軽率な発言するのはやめてください」
あ、もちろんこの階だけじゃなく社内ではやめてくださいって意味です、と付け足したけれど、結城さんは私の言葉なんて気にしていない様子で話を進める。
「呼び出し、噂の事で?」
「私と佐々山課長が付き合ってるっていう封書が届いたみたいで。
課長が結婚を控えているから、一応念のためって感じでした。
大丈夫ですよ。もう話は終わりましたし犯人探しするつもりもありませんから」
封書って聞いて顔をしかめた結城さんに、階段を下りながら釘を刺す。
山川さんだってほぼアタリをつけていた結城さんはきっと、本人に問い詰めようか考えていたに違いない。
結城さんはきっぱりとそう言った私に眉間にシワを寄せた。