狼系王子とナイショの社内恋愛


「私にとっても都合がいいからそうしただけですから。
結果的に課長を庇ったみたいにはなりましたけど」

話しながら四階まで下りた時、踊り場で山川さんとばったり出くわした。
営業鞄を持っているところを見ると、結城さんみたいに待ち伏せや尾行をしていたわけではなく、仕事で外出した帰りのようだった。

山川さんは、私と結城さんが一緒にいる事を不快に思ったのか、見るなり顔つきを険しく変える。

「山川さん、お疲れ様で……」
「山川さん。これ以上、高橋さんや佐々山課長に迷惑をかけるのはどうかと思いますよ」

犯人探しはしないって言ったばかりなのに!と、驚きながら隣に立つ結城さんを見上げる。
というか、半分睨みつける。

結城さんはそんな私の視線には気づいているだろうに、私には見向きもせずに山川さんをじっと見ていた。

口もとにはわずかに笑みが浮かんではいるけれど、あまり穏やかではない感じがした。
いつも波風立たせないようスルスルと笑顔でかわしている結城さんにしては珍しい。

そんな結城さんの視線の先で、山川さんは顔をしかめたまま目を逸らす。


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