狼系王子とナイショの社内恋愛


「それより、誰でも分かるんですか?
私、三年も働いてるけどそういうの一度も分かった事ないんですけど」
「俺もみんな分かるわけじゃないです。
言ったでしょ、気にかけて見てる人だけだって」

意味深に微笑まれて、眉をしかめる。
なんで人気者の結城さんが私なんかを気にかけて見てたんだろう。

そんな心の中の声が聞こえたように、結城さんが続ける。

「高橋さんは覚えてないかもしれないけど、高橋さん、一度俺の噂を止めてくれた事があるんです」
「噂?」
「給湯室で、高橋さんと他の女性社員ふたりが雑談してる時、たまたま通りかかって。
会話の中に俺の名前が出てきたからなんとなく聞いてたんですけど。
俺が秘書課の美川さんを捨てただとか、そんな話だったかな」
「どれくらい前ですか?」
「確か三ヶ月弱です」
「私、噂を止めたんですか?」

まったく覚えがないだけに、顔をしかめながら聞くと、結城さんが頷く。


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