狼系王子とナイショの社内恋愛
想いをぶつける方向性は間違っていたけれど、この人も本当に結城さんが好きだったんだ。
それが表情から見てとれて胸が苦しくなった。
だけど、だからって別れて結城さんを差し出すわけにもいかないから。
そう思い私たちに背中を向けた山川さんを黙って見つめていたけれど、ある事を思い出して呼び止めた。
「あの、課長との事なんですけど。
私が片思いして一方的に振られたって事になってるので、そういう事でお願いできますか?」
振り返った山川さんに近づいて、小声でお願いすると、思い切り顔をしかめられてしまった。
「片思いって……だって付き合ってたんでしょう?」
「そうですけど、コンプライアンス室の室長にそう説明した方が話が早かったんです。
振られたってしておけばこれ以上詮索もされないし、それが一番丸く収まると思ったので」
「けど、だからって振られたなんておかしいじゃない。それこそ、そんな噂が広まったら恥かくわよ?
……高橋さん、プライドとかないの?」
「なくはないですけど……」
「課長に二股かけられて捨てられたんでしょう? だったら、その通り言ってやればよかったのに。
恨んでるんでしょう?」