狼系王子とナイショの社内恋愛
「いいえ。でも、メールも呼び出しも今回限りにしてくださいね。
奥様が知った時、傷つきますから」
微笑みながら、課長の座る席の向かいに座る。
課長は私の言葉にわずかに眉を寄せて、ああと呟くように言ってから、注文はもうすませてあるからと言った。
間もなく運ばれてきたのは、カフェモカとカフェラテ。
このお店ではいつも同じメニューを頼んでいたから、課長もそれを覚えていたんだなぁと懐かしい気持ちになる。
私の前にカフェラテを置いた課長は少し黙った後、私と目を合わせた。
「どうしてもきちんと謝りたかったんだ。
高橋さんを傷つけた事を」
メールを見た時、そうだろうなとは思ったけれど。
結婚も決まっている状態で私にメールしてまで会うなんて、迂闊というか危なっかしい人だなと呆れてしまう。
私がコンプライアンス室でとった態度を見れば、わざわざ謝らなくたって仕返しをするとかそんな危険性はないのは分かったハズだ。