狼系王子とナイショの社内恋愛


仕返ししようなんて事を考えていれば、コンプライアンス室に呼び出された時が格好のチャンスになるわけだし。
あの時、事実をぶちまけて泣けば課長を追い込むことができたんだから。

それをしないで嘘をついてまでした私の気持ちを、課長も分かってくれただろうと思っていたのだけど……。
こうして呼び出してまでして謝りたいだなんて伝わってなかったって事だろうか。

「心配しなくても大丈夫ですよ。課長に仕返ししてやろうだなんて考えていませんし。
正直に白状すれば少し恨み言は思いましたけど……そこは許してください」
「高橋さんが何かするとは思ってないよ。
付き合っていた時間で、優しい子だっていうのは分かっているし、もしも俺がこのまま謝らなくても何もしないで気持ちを呑み込む事も。
だからこそ……謝りたかったんだ」

そうつらそうに顔をしかめた課長に、私も同じ表情になってしまう。

私がもしも今、課長との事を吹っ切れていなかったら。
今の課長の行動は、余計に私をつらくさせるだけだったと思うからだ。

謝って楽になるのは課長だけで、謝られたところで私はつらさが増す。
もう戻れないんだって事を思い知って。


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