狼系王子とナイショの社内恋愛
私も課長が無理している時とか、何かあったんだろうなって時は何を言われるわけでもなく、なんとなく気づいたけど、お互い様だったって事か。
二年も一緒にいたのだから、当然と言えば当然だけど。
自分では気づいていないようなクセをお互い知っているのかもしれない。
それだけ、課長も私を見てきてくれたって事なのかもしれない。
私が想うのと同じように。
「さっきの、吹っ切ったって言葉は本当だと受け取っていいかな」
伏せていた瞳を上げると、申し訳なさそうに微笑む課長と目が合った。
「もしも、謝る事が高橋さんの負担になるようなら何も言わないよ。
もっとも、謝ったところで俺が高橋さんを傷つけた事が白紙に戻るなんて思っていない。
高橋さんとの事は、胸に刻んで生きていくつもりだ。
だけど……そんな事関係なく、ただ謝りたかったんだ」
俺の行動が高橋さんを不愉快にしてしまったなら申し訳ない、と頭を下げる課長に、心からいいえと答える事ができた。
こんな人目のある場所で、私なんかに、テーブルにおでこがつきそうなほど頭を下げる課長を、心の底から許そうと思えた。