狼系王子とナイショの社内恋愛


「大丈夫です。
以前、課長の結婚祝いの飲み会の時……。課長が謝ろうとしてくれたのに聞き入れられなかった事、私も少し気になっていたので。
今回、きちんと話せてよかったです」

頭を上げた課長に微笑むと、課長は、やっと微笑んでいる、そんな感じの顔をして。
それから、勝手な事を言っていいかと聞く。

「二股した上捨てる事以上に勝手な事がありますか?」

笑いながら冗談を言うと、課長は笑みを少しつらそうに歪める。

「高橋さんの言うとおり、二股していた俺が言っても説得力にかける事は分かってる。その上で言わせて欲しい」

見つめる先で、さっきまで終始情けない顔しかしなかった課長が微笑んだ。

「碧衣への想いに嘘はなかった。
愛してた」

本当にこの人は仕方ない人だな。
情けないし、嘘が下手なくせに二股だけは必死に隠したりするし、結婚するのに昔の女に愛してたとか言い出すし。
二股してた人が今更何言ったって信じられるはずがないのに。
こんなの奥さんに聞かれたら取り返しつかなくなるのに。

それでも、私なんかのためにわざわざ……本当にどうしょうもない人だ。


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