狼系王子とナイショの社内恋愛


「知ってます」

微笑みたかったけれど、なぜか泣きそうになってしまったせいで苦笑いみたいになってしまった。
浮かんでこようとする涙に、収まれ収まれと心の中で命令する。

なのに。

「碧衣……。
本当に、申し訳なかった」

もう一度そう頭を下げた課長が、男のくせに泣いたりするから。
頭を下げたまま肩を震わせる課長の姿に、涙が溢れてしまった。

泣いたりしたら課長が変に誤解しそうな気がしたから、課長が顔を上げないうちに席を立つ。
そして歩き出す前に、まだ頭を下げたままでいる課長に少しだけ視線を向けた。

「課長。お幸せに。
――さよなら」

そのまま、何度も課長と一緒にきたお店を後にした。








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