狼系王子とナイショの社内恋愛
「嫉妬で焼け死ぬかと思った」
お店を出てすぐにそんな声が聞こえてきて横を向くと、ドアの横に結城さんの姿があった。
結城さんはそんな物騒な事を呟いてから私に視線を移す。
「碧衣に言われた通り、この先の本屋で待ってればよかった」
「……いつからいたんですか」
呆れてため息をつきながら歩き出すと、結城さんも私の隣に並ぶ。
「なんで言われた通り待ってられないんですか……。
そんなに時間もかからないからって言ったのに」
「俺も、碧衣がそう言うなら大人しく待ってようと思ってたんだけど」
「けど?」
歩きながら隣を見ると、まるで自分に呆れたように笑う結城さんと目が合った。
「もしも、課長とヨリを戻すって話になったらなんて考えたら、不安でいても立ってもいられなくなった」
呆れてしまうのはこっちの方だ。
結城さんは自分が周りの異性からどういう目で見られてるかを自分で分かっている人だし、だからこそ常に自信満々で余裕があるのに。
なんで、私がちょっと課長と話しに行くだけでこんなにも弱気になってしまうんだろう。