狼系王子とナイショの社内恋愛


私がじっと見つめたからか、結城さんも黙って私を見つめ返してくれる。
自信家だけど、少し目を離すとすぐに不安がってしまう優しい瞳を見つめながら微笑んだ。

「二倍の大きさにならないように気を付けるので、隣を歩いてくれますか?」

いつか話した言葉で聞くと、結城さんは、ははっと楽しそうに笑って。
それから、当たり前だろと優しく微笑む。

「二倍になってもシワシワになっても離すつもりはないけど、それでもよかったら」
「許容範囲が広すぎです」
「碧衣に限ってはってだけだよ」

そっと差し出された結城さんの手に、私も手を伸ばす。
きゅっと握られた手を見つめてから視線を上げると、微笑みを浮かべる結城さんと目が合って。

「映画でも行こうか」
「あ、いいですね。何か観たいのあるんですか?」
「胸がえぐられるホラーとか?」
「……じゃあ私はその間ロビーで逆ナンする相手を探す事にします。
もしかしたらまた大智さんみたいにほいほいひっかかる人がいるかもしれないですし」


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