狼系王子とナイショの社内恋愛


「あの時は、結城さんをかばいたかったんじゃないんです。
あの……佐々山課長、名前が優輝っていうんです。佐々山優輝」

そうなんですか、と頷く結城さんはまだ事情を分かってなさそうだから説明を続ける。

「会社以外では優輝って呼んでいたから、噂話に出てくる結城さんの名前と佐々山課長が重なっちゃって。
それで、おもしろくなくなってあんな風に強引に話を止めちゃっただけなんです……」

本当にすみません、と頭を下げる。
偶然聞いていただけだし、私が悪いわけではないけど、結果的に誤解を招いてしまったのは確かだ。

それを聞いた結城さんはしばらくの間黙ってしまって。

でも別に、私なんかに、実はかばわれてなかったって事実を知っただけでそんな黙るこむほどの事でもないのになんで……?
なんてそんな風に疑問に思っていると、やっと結城さんの声が聞こえた。

「じゃあ、高橋さんは俺の事どうとも思ってなかったわけですか」

顔を上げると、結城さんは苦笑しながらこちらを見ていた。



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