狼系王子とナイショの社内恋愛
高級イタリアンが食べたいなんていう急なわがままを叶えて、会話もリードしてくれて、店内でも私が緊張しないように気を使ってくれて。
その上、私に気づかれないようにお会計を済ませておくなんて……。
もうさっきのナルシスト発言も許される気がしてきた。
この人がモテるのも分かるかもしれない。
「半分払いたいって言ったら払わせてもらえますか?」
どうせダメだろうけど、一応ダメ元で聞く。
結城さんは予想通り、おごるって約束だったからと私の申し出を突っぱねたけど、それでも粘ると「じゃあ」と妥協案を出す。
「またこうして会ってくれませんか?」
「……自分に夢中じゃない女が珍しいからですか?」
結城さんはそれについては否定せずに微笑む。
「映画館のカフェスペースで高橋さんの友達に声をかけられた時は、正直面倒だと思ったんです。
けど、無理やり連れてこられてよかった」
「やっぱり無理やりだったんですか……すみません、本当」
「いや、可愛いから許します」
「あ、あの子可愛いでしょ。
モテるし競争率高いけど、よかったら紹介……」