狼系王子とナイショの社内恋愛
結城さんが真剣な顔つきでじっと私を見つめる。
こんな風に見つめられれば少しは胸がときめくものかもしれないけれど。
生憎私の胸の中は他の感情で満員だったから、胸が跳ねるような空きスペースはなかった。
普通の鼓動がギリギリのラインだ。
「佐々山課長が、まだ好きだから?」
黙ったままの私を肯定しているととった様子の結城さんは、少し黙る。
それから嫌な微笑みを浮かべて私を見た。
「だとしても関係ないです。
どっちみち高橋さんには選択肢ないし」
「……まだ課長との事でゆするつもりですか」
「切り札は使えるうちに使っておかないともったいないですから」
その切り札を出されて高級イタリアンにきたっていうのにまさかまだチャラになってないとは思わなかった。
でも、高級な料理をただおごってもらってチャラなんていうは虫がよすぎる事は自分でも分かっていたから、それは言わずにただ顔をしかめて結城さんを見る。
「また会ってくれますね?」
極上の微笑みと切り札を前に、私に選択肢なんてない。