狼系王子とナイショの社内恋愛
小声で言う私に、結城さんが首の後ろをかくようにして呟くように言った。
面倒くさそうにというか、バツが悪そうにというか、とにかくそんな感じだ。
さっきからどうも歯切れが悪いし、何かあったとか?
不思議に思いながら、体調でも悪いのかと疑問になって聞こうとした時だった。
ざわざわしていたオフィス内に、一際大きな声が聞こえたのは。
「えっ、赤ちゃん……?!
佐々山課長、もうすぐパパになるんですか?!」
その声に、結城さんはチっと小さく舌打ちしてから、総務課の方に視線を向ける。
私も、今聞こえてきた言葉に耳を疑いながら、結城さんの視線を追った。
佐々山課長の席の周りにできたひとだかりを、少し離れたところから見つめる。
「おめでた婚じゃないですかー。
式はいつなんですか?」
「なるべく早くにとは思っているが、まだ正式には決まっていないんだ」
「そうですよね! 奥さんもお腹が目立つ前にドレス着たいですもんね、きっと」